短歌まとめ
嘘つきなMと指切りオレンジの爪と遺された疵
氷砂糖状の秘密を含んでるあの子の唇アダムの林檎
おひさまは窓の形に切り取られ風は届かぬ近い隔たり
「終わりね」の前に言うことあるはずで2人の中にホームズは不在
ほんとはさとっくに知っているくせに、僕がPに飼いならされたいって
行き場など何処にも持てぬ二人だし無音の夜にダンスをしよう
夕焼けと金星昇る中間で踵潰れた靴は彷徨う
永遠にほんの少しは近付けたホルマリン漬け心臓の鼓動
少女たちは花と秘密を戯れに口に含んで大人になるの
口ごもり少しよってる眉間に学ぶ不味くないと美味しいの距離
キッチンに不規則なリズム響かして次は何だっけさしすせそそそ
嘘つきなあなたと嘘と知っていて信じる僕は共犯者です
後悔は合鍵ごと置いてって進むしかない裸足の夜道
原色のアルミ缶からあふれ出すジャンクな泡になる人魚姫
体温が行き交うだけの幸福に固有名詞をご記入ください
ママン
これも『短歌があるじゃないか。』のお題で詠んだもの。
ママンとの約束ひとつ破るたび芋虫はまた脱皮していく
ゆりかごに幼子はもうおりませぬママンの歌はいつまでも響き
私が母親に対してすごく恐れを抱いているのがこれだけでよく分かるなと、思わず苦笑。
上のやつは「芋虫」っていうのが野暮ったい少女のイメージだったのです。母親に嘘をつくたびに少女は大人になって綺麗になってそして女になるんだろうという安直なイメージなのですが。
もっとうまいこと歌えなかったかなと思いつつ、結構気に入ったりもしています。
意味持つあした
一月の十六日はきらきらと鳥のフンさえ意味持つあした
1月16日は大好きな人の誕生日だったのです。フンすらもいいものに見えるほど嬉しい日ってきっとあるのだと思う。
同じ人を思って歌ったのがもう一つ
ファンという文字とふあんは似すぎてて私いつでも不安なんです
一方的な憧れに過ぎないのだけれど。いろんなことに心が揺れて、それはやっぱりファンだからなんだろうと噛み締める日々
くりひろい折句
『短歌があるじゃないか。』のお題に沿って短歌をつくっていた。
だからそれぞれの頭を取ると「くりひろい」になる。
口付けはリンスの薫り広がって論理や倫理いらぬ雪の日
クスクスと林檎ざわめく日陰にはロンドン帰りイタリア兵士
二つとも特に意味はない。特に下の歌。当然のようにくりひろいとも何の関係もない。
一応上は倫理上眉を顰められる様な二人が雪の日に口付けているっていうだけの歌。雪って周りの音を吸収してくれて、二人きりの世界に閉じ込めてくれそうじゃないですか?
短歌は楽しい
去年の11月ごろから短歌を詠み始めた。
詠みはじめたきっかけについて書いたツイートをのせておく
短歌に興味を持つようになったのは『ひきこもり女子いろいろえっち』というはてぶのブロガーさんが穂村弘の大ファンで。で、穂村弘のことは『恋愛瞳孔反射』で私も知っていて、好きだったのだけど歌人であるということはしらなくて、詩人だと思ってたんだよね。
そんで穂村弘の『絶叫委員会』を読んで、この人の世界への言葉のアンテナのはり方が、切り取り方が面白いぞって思ったの。そこで伴風花の短歌とかも紹介されていて、すごいなぁ。やっぱり言葉を生業にしている人の言葉の切り抜く精度は違うなって素直に感心しながら、やっぱりたまに穂村読んでました。
そこで本屋よったら『短歌という爆弾 今すぐ歌人になりたいあなたのために』という穂村の本が文庫で出ていて、買って読んだら、まぁ意味わかんない。31字に込められた思惑の多さやら、技法やらがもう難しくて難しくて。短歌に入れられた講評もやっぱり難しいけど、穂村が手直しすると良くなってるの
それは単に私が穂村弘の世界観が好きで、穂村が手直ししたら全て穂村っぽくなるからなのかもしれないけど。それでも31字適当に並べた中学の時の宿題みたいなものではないんだなぁとしみじみ思わされて。 少しでもここにある穂村の言葉理解できるようになるかなぁと思って短歌を詠もうと思った。
で、詠んでると難しいし、善し悪しなんてかけらも分からないけど楽しい。世界を上手に切り取ることはまだまだ出来ないけれど、手にしたばかりのハサミで写真を切りまくっているような面白さがある。穂村ばっかり読んでたから最近は他の歌人も読んでいきたいなと思いつつ、本屋に歌集は少なくて泣く。
そんな感じで短歌を詠みはじめて2か月と半分。
ツイッターだけじゃなくて、もうちょっとまとめられたらいいなと思ってつくりました。
ツイッターの短歌をいくつかまとめて載せておいたり、ちょっと言い訳をしてみたりする予定